揺れるブランコ


廻る、廻る。
世界が廻って、景色が溶けてく。
見えるのは、大きく笑う、向かいにいるユウちゃん。
僕が思い切り廻すとユウちゃんは、速い速い、と言って笑う。
ユウちゃんの後ろには焼けた空が広がっている。
空も雲も町も人も赤に染まる。
「ユウちゃん、ブランコ乗ろう!」
ブランコってなんか、ロマンチックだと思ったんだ。
腕が疲れたっていうのもあるんだけど。
「うん!」
ユウちゃんは回旋塔を飛び降りて、ブランコの方に駆けていく。
ブランコに乗ったユウちゃんは空の赤に気が付いた。
「タカキくん、空きれいだよ!」
ユウちゃんは興奮しているのか、大きな声で言った。
僕はこんな近くにいるのに。
「知ってた」
「おしえてよ!」
ユウちゃんは笑う。
そんなユウちゃんが僕は好きだ。
ユウちゃんが誰を好きなのか僕は知らない。
ブランコに乗って、大きく揺れている。
ユウちゃんより高くなろうと、僕も大きく大きく揺れた。
「タカキくんすごいねっ」
「まあねっ」
空の赤は徐々に薄れて、東の空から夜が迫っていた。
「ユウちゃん、そろそろ帰ろうか?」
「そうだね」
もうちょっとここにいたい、って言ってくれることを期待していた。
ユウちゃんは僕の前を歩く。
僕の気持ちをユウちゃんは知らない。
僕だってユウちゃんの気持ちを知らない。
繋がることはきっと無い。
僕の後ろでふたつのブランコが小さく揺れていた。
ユウちゃんと僕がいた証はそのブランコだけ。
「タカキくん」
ユウちゃんは笑う。