君のための日


一年にたった一度、君のためにある日。
君には内緒で準備を始めよう。
君は派手なのが嫌いだから、飾り付けはしないでおくよ。
でもテーブルクロスくらいはしておこうか。
その上に手作りのケーキを置いて、ろうそくも立てる。
この日のために買っておいたプレゼントを用意して。
それから、冷蔵庫からシャンパンを取り出して。
今日買ってきたクラッカーを片手に持って、あとは部屋の灯りを消すだけ。
すぐに君は来るだろうな。
そう思っていたら、足音がきこえて、だんだん近づいてくるのがわかる。
カギを差し込む音。
ドアノブをひねって、ドアを開ける。
真っ暗な部屋に向けて君は小さく呟いた。
「ただいま」
君が灯りをつける前に僕はスイッチを押す。
明るくなった部屋に響くクラッカーの音。
驚いた君の顔。
すぐに笑顔になって、少し涙目になって、また小さく言った。
暗い部屋ではなく、今度は僕に向けて。
「ありがとう、嬉しいよ」
君の手を引いて、このために用意した部屋へ。
ケーキ、シャンパン、プレゼント。
すべてこの日のため、君が生まれたこの日のため。
何よりも素敵で、大切な、この日のため。