泡沫のとき


あなたはシャボン玉をとばす。
壊れないように、そうっと吹いて、つくって。
楽しそうにしてるから眺めていただけなのに、あなたはわたしが退屈してるとでも思ったの?
「楓もやる?」
にっこり笑って訊いてくるから、断ることなんてできないでしょう?
「シャボン玉つくるの下手なんだよね」
そう言いながら受け取って、そうっとつくる。
ふわふわ浮かんで、すぐにはじけて、消えてしまった。
小さな水玉みたいなものが少しだけ宙を漂って、落ちていった。
わたしからあなたへの想いも、いつかは壊れてなくなってしまうのかな。
今、こんなにもあなたを想っているのに、おかしな話だよね。
あなたはまたシャボン玉をとばした。
小さなシャボン玉がひとつ、高く浮かぶ。
飛んでゆけ、どこまでも。