星が街へとふりそそぐ


獅子座流星群。
珍しいものなんだって友達が言ってた。
だから、なんとなく眺めてた。
灯りがない暗い部屋で、カーテンを開けて、ひとりで。
瞬きをしても見逃すことはない程、
流れ星が次から次へと街に降ってくる。
こんなに星が降ってたら、
ひとつくらい地球にとんできてもおかしくないんじゃないかな、なんて。
こんなきれいな空を見ながら、こんなことを考えてしまう。
ロマンチックでも何でもない。
そういえば、お父さんはロマンチックな人だったな。
もういない人のこと思っても、どうにもならないけど。
よくドライブがてら星空を見に行った。
どうやって見つけたのかなんて知らないけど、
お父さんはきれいな星空が見えるところを知ってた。
だからよくそこへ行って眺めてた。
星を見ながら、お父さんが学生だった頃の話を聞いたりした。
お父さんの話はつまらなくて、よく眠りそうになったけど、お父さんの声は大好きだった。
子守歌みたいにやさしくて、落ち着いた声を今でも憶えてる。
夏の夜は暑くて、黙っていても汗が流れてきた。
窓を開けて、脚を投げ出す。
涼しい風が脚をなでていく。
目を閉じて、耳を澄ませたら、
お父さんの笑った顔が頭にうかんで、そして、すぐに消えた。
もう一度思い出そうとしても、思い出せなかった。
こんなにたくさん流れ星が降るのなら、
たったひとつの願いくらい、きっと叶えてくれるだろう。
今まで我慢してきた、たったひとつの願いなら、きっと叶えてくれるだろう。
目をつむって、両手を合わせて、想いを込めて呟いた。
叶わぬ願いと知りながら。