暖かな午後の日差し


どちらかと言えば苦手な人、というより嫌いな人。
頭が良くて、スポーツもできて、性格も良くて、そのうえかわいいなんて。
それはきっと努力とかじゃないと思う、きっと才能ってやつなんだ。
だから、自分勝手な思いだけど、嫌い。
こんな思いで好き嫌いを決めるのはダメだってわかってる。
でも、悔しいのかはわからないけど、嫌いなんだ。


外は日が暮れ始めてて、窓からオレンジ色の光が差し込んでいた。
委員会が終わって、教室に戻る。
静かだから誰もいないと思ってたのに、教室にはあの人がいた。
椅子じゃなくて、机に座って、泣いていた。
ティッシュで鼻をかみながら、ひくひく言ってたのに、
そんな様子さえきれいに見えた、泣き顔さえきれいだった。
「ごめんね、気にしないで」
泣きながら、わたしに言った。
「なんかあった?」
関わりたくなかったのが本音だけど、悪いような気がした。
少しでいいから助けなきゃいけないような気がした。
「たいしたことじゃないよ、ちょっと苦しかっただけ」
泣いてるのに、笑って言った。
いつもならそんなの気に掛けないのに、今日は違っていて、
見てるだけで苦しかった。
「笑わないでよ」
わたしは近寄って、頭を軽く叩いた。
そしたらもっと泣き出して、ちょっと困ったけど、それで良いような気もした。
「あたし、完璧じゃないよ」
その声はいつものきれいな声じゃなく、嗚咽が混じった醜い声。
「わかってるよ」
そんな風に言ったけど、わかったのはついさっき、泣き顔を見たとき。
嫉妬してたんだと思う、完璧に見えたから。
だからきっと嫌いだった。
でも完璧なんてあるわけなくて、今までの自分が恥ずかしかった。
わたしがいろんなことで悩んでるように、きっとみんな悩んでるんだと思う。
完璧そうに見えても、きっとそうじゃない。
もっとはやくに気付けば良かった。
ごめんね、あんな見方しかできなくて。
でも今からは違うから。
ちゃんとわかってるから。
苦しかったら言って欲しい、小さいけど、力になるから。
教室に差し込むやさしい光、そっとふたりを包んだ。