白の平行線


女の子見てたでしょって怒ってみたら、逆ギレされた。
久しぶりのデートだったのに、こんなの最悪。
ハルはあたしの何歩も先を歩く。
ハルの歩幅は大きいから早足じゃなきゃ見失ってしまう。
「ハル、ねぇハルっ」
何度呼んでも振り向いてくれない。
止まってさえくれない。
「ねぇ、ハル。どこ行く気?」
そう言ったら、ハルは急に走り出した。
見失いそうになって、ハルの背中だけを見てひたすら走った。
ハルの脚は速いから、見失わないようにするだけで精一杯だった。
「速いよ、ハルっ」
ハルは立ち止まった。
あたしも止まって、荒くなった息を整える。
ハルがゆっくり振り向いて、睨んでくるかと思ったら、笑ってた。
左腕を高く上げて、空を指さす。
「アイ、見てみ」
ハルの言ったとおり、あたしは空を見上げた。
青い空に白の平行線。
「ヒコーキ雲だよ」
「どこでも見れるよ?」
ハルは駆け寄ってきて、手を繋いでくれた。
あたしの頬に小さくキスしてくれた。
こうゆうこと、滅多にしてくれないから驚いた。
「手はお詫びのしるし。ほっぺは愛のしるしな」
ハルはそう言って、照れくさそうに笑った。